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学科紹介

数学・情報数理学科オリジナルサイトへ

未知と真理に遭遇する場です!

19世紀の大数学者ガウスは、「数学は科学の中の女王である。」と言っています。この言葉には二つの意味があります。
第一に、数学は、すべての自然科学に、厳密科学としての理論的根拠と探求手段を与えるものとして君臨しています。第二に、数学はそれ自体が広大な宇宙で、世界の数学者が日々未知の現象を解明しつつあります。そして、本学科でも、多くのスタッフがこのような第一線の探求を続けています。私たちは、数学がこの両面を持ち、さらに今日情報科学と連続した分野を形成しつつある点を考慮して、数学コースと情報数理学コースとを合わせた複合学科としました。その中で一貫した体系的カリキュラムを設定し、数学あるいは情報数理学を主専攻として興味をもって学べるようになっています。

Curriculum

カリキュラムについて

1・2年次では、すべての学生が数学と情報数理学の基礎を学び、この期間に自分の学ぶ方向を判断することになります。1年次は、授業以外に5名程度のグループに教員1人がついて種々のサポートをします。より高度な数学の基礎となる線形代数や微積分も、他の理工系の学生とは別に2年次に本学科独自の続論が用意されるなど、きめ細かい配慮がなされています。
3年次からは数学コースと情報数理学コースに分かれて、より専門的な講義を履修することになります。カリキュラムは、自分の勉強したい専門分野を主体にプランを立てられるよう多くの選択肢が用意され、本学科のスタッフでカバーしきれない専門については、学外の講師による講義も組まれて、学生独自の主体性を生かす配慮をしています。4年次になると、少人数(4人程度)のグループに分かれて卒業研究が行われ、各指導教員のもとで、学部4年間の勉強の仕上げや高度な勉学の基礎固めと共に、議論や発表の訓練も行います。

数学・情報数理学科カリキュラムツリー

各教育研究領域の紹介

代数

数の集合のように、演算を持つ集合の構造を調べることが代数学の入門です。代数的構造の基礎となる群論から始まり、環論、体論と続きます。体論では、現代数学の始まりともいうべきガロア理論が目標となります。いくつかの公理から組み立てられる代数系の中に美しさを見つけられると、数学が面白くなるのではないでしょうか。また、加群、ネーター環、ホモロジー代数学など、その後に続く代数研究の基礎となる講義が用意されています。4年次のセミナーでは、さらに進んだ代数学の諸理論、整数論、多元環や群の表現などについて研究することになります。数学・情報数理学科のワークステーションには、群や体の計算をするCAYLEYとGAPという2つのソフトウェアがあり、手計算ではなかなか大変な複雑な群などの計算をやってみることもできます。
みなさんどなたも難問を解いたときの喜びを味わった経験をおもちでしょう。もしその難問を世界中で最初に解いた人があなただったとしたら、もっとワクワクしませんか。創造と発見、それが数学の本質だと思います。

幾何

皆さんは「幾何学」と聞いてどのようなものを想像されるでしょうか。「ユークリッド幾何」でしょうか。それとも「四色問題」でしょうか。なるほど、確かにそれらも幾何学ですが、現代の幾何学はもっと多岐にわたります。例えば、整数論における有名な「フェルマー予想」も幾何学の範疇に入りますし、ホーキングの宇宙論も幾何学の言葉を用いて述ベられます。また、物理学における「非可換ゲージ理論」が4次元の幾何学に革命をもたらしたなどといったら皆さんはどう思われるでしょうか。
このようなことを言っていると、恐れを覚えるかもしれませんが、その根底に流れるアイデアは極めて素朴です。例えば、高校で学んでこられた「関数の最大値、最小値を求める方法」の考えは、上に述べた「4次元幾何学の革命」に本質的に用いられます。
本教育研究領域では、このような問題を考えるための基礎を学びます。具体的には、位相幾何学、微分幾何学(曲面論)、大城解析学、代数幾何学などです。
補助線をうまく引けたときの喜び、またそれにより新たに広がる視野など幾何学の面白さはさまざまですが、皆さんも自分なりの面白さを感じられるようになればしめたものです。

基礎解析

解析学というのは英語では「Analysis」といいますが、微分積分の延長にある分野です。Analysisを辞書で引いてみると、まず「分析」という訳が出ています。では、数学では何を分析するのでしょう。
関数を分析するのです。大胆に言えば微分と積分を主な道具として関数を分析するのが解析学です。
さてニュートンとライブニッツによる微分法の発見以来、数学や物理学を始めとした科学は大きな発展をしてきました。微分法によって人は「動くもの」を的確にとらえることができるようになった、と言えます。例えば多くの物理的な現象は関数とその導関数を含む方程式、「微分方程式」で表されます。このような微分方程式は複素数の範囲で考えるとより見通しのよいものになります。ところで「関数」は数に数を対応させるもの、ということですが、実はこのような意味での関数の中には入らないような「関数」も必要になります。関数の一般化という意味で「超関数」と言います。代数学や幾何学とともに古くから確立された解析学ですが、いろいろな新しい考え方、見方が発展して、そこにはとてもカッコイイ概念の世界が開けています。

応用解析

解析学とは数学の中でも特に極限概念を基礎とした分野である、といえるでしょう。みなさんが高校で教わってこられた微分積分学は(数学全体の基礎ですが、特に)解析学の一番の基礎であり、解析学の入口です。極限というのは決して分かりやすい概念ではありませんが、有限な存在である人間が無限を積極的に捉えようとした見事な例とみることができるでしょう。この教育研究領域では、高校では少々あやふやに扱われて来た極限の概念を見直して、しっかりした理論づけの上に立って議論を進め、さらにそのいろいろな応用をも研究します。理論を発展させ、さらに応用もして行くためには、基盤がしっかりしていなければならないからです。
この教育研究領域で扱われる項目を挙げてみると、複素解析学、線形及び非線形の函数解析学、作用素環の理論、微分方程式・積分方程式・差分方程式・偏微分方程式論など函数方程式の理論などです。さらに計算理論や、それらの社会科学および自然科学その他への応用などもあります。
数学の対象とする範囲は非常に広くまた深いものです。一見した所では何の関係もなさそうなものの間に思いがけない結びつきが発見され、これまでとは異なる新しい展開を示すことが少なくありません。数学の美しさや面白さは、そのような所にあるのでしょう。

確率・統計

確率論、確率過程、数理統計学および関連する分野の研究と教育を行っています。現代数学の確率論は、高校で学ぶ「場合の数」の世界から大きく発展し、集合論・測度論・ルベーグ積分などを駆使する解析学の一分野になっています。統計学は大きな集団や巨大なデータを解析し、そこから抽出した情報を意思行動決定に役立てる分野です。
確率・統計分野の特徴は、自然科学、社会科学、経済学、医学など現実世界の問題に幅広い応用があることです。座標空間上でランダムに動く粒子の運動をモデル化したランダムウォークとブラウン運動は代表的な確率過程です。これらを用いて、株価変動や生物の個体数変動、界面成長、電気伝導、交通流などの様々な現象をモデル化できます。確率論は非平衡統計物理学と呼ばれる最先端の物理学とも密接に関係しています。確率論とともに代数や幾何の手法も使って、現象の中に潜む規則性を研究します。統計学はデータが存在する分野全てにおいて活躍しています。その数学的基礎を与えるのが数理統計学です。人工知能の様々な手法やビッグデータの解析のための手法も、その基礎は数理統計学で支えられていることが多いのです。数理統計学を深く学ぶうえでも、確率論の基礎を理解することが重要となります。
4年次に行う卒業研究では、確率論および数理統計学の基本理論の習得とともに、現実の問題を数学的にとらえることを学びます。

情報数理

この学科の情報数理学コースは、平成6年度に作られました。急速に進歩しつつある今日の情報化社会では、時代の変化に対応できる柔軟な幅広い思考力と、時代を越えて必要な数理的論理性を兼ね備えた人材の出現が待ち望まれています。そこで私たちは、現在の日本で特に不足している、情報科学の数理的側面を理解できる人材の育成を目指して、このコースを作りました。この目的のためには、数学の考え方と基礎的知識を完全に修得しておくことが不可欠です。本学科に入学すると、3年次になって情報数理学コース、数学コースのどちらに進学するにしても、1・2年次では同じ専門科目を履修するのは、このためです。このシステムは情報数理学と数学の双方の発展にとって、きっと良い結果を生むものと私たちは確信しています。

情報数理学教育研究領域には、情報科学基礎論、計算機数理学、情報基礎数理学の3つの研究分野があります。これらはいずれもコンピュータや情報通信に関連した研究分野であり、これらをハードウェアとソフトウェアに分けると、ソフトウェアに関連しています。と言うと、「ソフトウェアの使い方を覚えるだけじゃないの」と思う人もいるかもしれませんが、そうではありません。この教育研究領域でのソフトウェアとの関わりは、あくまで数学的な視点からのものです。すなわちこれらの3研究分野では、情報科学に関連する種々の数理科学的方法の教育・研究を行います。もちろんコンピュータ自体を対象とする計算機科学に特に深い関わりがあるのですが、興味の対象はやはりその数理科学的側面にあるわけです。例えば、情報を符号化したり暗号化したりする際には、代数構造の知識や確率・統計的処理、更には計算機理論などが必須となります。このように情報科学に必須の代数的思考法や確率的思考法などの習得も大きな目的の1つです。

今日の高校生では計算機のプログラムを書いたことがある人も少なくないでしょうが、プログラム自体が数や図形のような数学的対象であることに気付いた人は、おそらくあまりいないでしょう。例えば、プログラムの理論という分野ではプログラムの数学的構造を明らかにし、プログラムが自分の意図通りに動くことを証明するにはどうすればよいか、などといったことを考えていきます。このような学習を通じてきっとプログラムに関して新しい見方ができるはずです。その喜びを十分に味わって下さることを期待します。

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物質と時空、基本法則からハイテクまで

物理学は、自然界の諸現象の奥に存在する法則を実験事実をよりどころとして追及する学問です。その対象は素粒子、原子核、固体・液体等の凝縮系、宇宙というように、超ミクロから超マクロの世界にわたっています。
物理学科では、素粒子から宇宙までの広範な分野にわたる基礎物理学、実験・理論に続く第3の方法としての計算物理学、巨視的物質の性質を微視的に追及する凝縮系物理学の3講座で教育・研究が行われています。
「ハドロン宇宙国際研究センター」戦略的重点強化プログラムの紹介動画はこちら

Curriculum

カリキュラムについて

1年次は、まず現代物理学という科目で物理学の全体像に触れてもらうとともに、物理の学習法についてのガイダンスを少人数で受けます。同時に、力学、電磁気学、物理数学といった基本的な科目を学ぶ事になります。これらの重要な科目では、講義にプラスして十分な時間を取った演習を行い、両者の有機的結合によってより深い理解が得られるよう配慮されています。また、数学や情報処理、物理学実験の基礎についても学びます。
2年次になると、力学や電磁気学の進んだ内容と、量子力学、熱・統計物理学の基礎、計算物理学が加わります。
3年次では、量子力学と統計物理学という、物理学の基幹的な科目を勉強します。また物理学実験を履修し、実験物理学の基礎的技術を身に付けます。3、4年次を通じて、物理学の諸分野、つまり素粒子物理学、原子核物理学、流体力学、特殊相対論、宇宙物理学、物性物理学の講義が種々用意されています。
4年次になると各研究室に配属され卒業研究を行います。そこでは、実験的研究、理論的研究や計算物理学的研究等を通して、現代の最先端の物理学に近づく事が可能です。さらには、大学院博士前期課程の物理学各分野の専門基礎科目を履修することができます。
なお、物理学科には早期卒業の制度があり、成績優秀者は3年で卒業する事も可能です。

物理学科カリキュラムツリー

各分野の紹介

教育研究活動

以下、9の教育研究分野ごとに行われている教育研究活動を紹介します。

素粒子物理学

素粒子物理学は物質の最も基本的な構成要素とそれらを支配する法則を探求する学問です。量子ゲージ理論と呼ばれる枠組で記述される6種類のクオークとレプトンから物質が構成され、それらの間に電磁力、弱い力、強い力の3種類の力が働いているというのが現在の素粒子理解の到達点です。重力にも量子論を適用すると、弦や膜といった拡がった対象も考えなくてはならないと考えられています。
素粒子物理学研究室では、場の量子論や弦の理論を用いた素粒子の理論的研究を行っています。卒業研究では、これらの基礎をセミナー形式で学びます。具体的な研究は大学院に入ってから始めます。当研究室の現在の研究テーマは、以下の通りです。
1)量子色力学によるクォーク閉じ込めと質量ギャップの解明、
2)場の理論におけるトポロジーとソリトン、
3)弦理論によるハドロン現象の解明、
4)場の理論の相互作用が強い系への適用、特に、繰り込み群の方法やセルフコンシステントな近似法など非摂動的手法の理論的研究。

原子核物理学

我々の身の回りの物質を構成する元素はどのようにして作られたのでしょう?実はビッグバン以来の宇宙の歴史の中で、原子核反応により合成されたのです。宇宙の歴史をたどり物質の起源を探るためには、原子核の性質を詳しく知る必要があります。原子核とは、100個程度の陽子と中性子が、強い相互作用を及ぼし合いながら原子の約1万分の1のサイズに凝縮し、量子力学の法則に従ってダイナミックに運動しているシステムです。私たちはそんな原子核の性質を、コンピュータも用いながら理論的に研究しています。4年次の卒業研究でその基礎を学ぶほか、大学院(融合理工学府)では最先端の研究に携わることができます。
近年、超新星爆発の際などに一時的に生成される不安定な原子核の性質が詳しく調べられるようになり、その研究が世界各国で活発に進められています。私たちも理論的立場からその一翼を担っており、国内外の学会で千葉大学大学院生も大いに活躍しています。

宇宙物理学

宇宙を理解することは古代から人間の知的好奇心を刺激し続けてきた最大のテーマと言えるでしょう。本教育研究分野では、惑星系から超銀河団に至るさまざまな階層の構造形成と進化、種々の天体で観測されている活動的現象の起源を、量子力学、電磁流体力学、核反応論等の物理学理論と人工衛星等による観測を通じて明らかにしていくことを目的としています。
実験室では実現困難な極限的な状況下で起こる天体現象を解明するには、理論的に構成された星や銀河のモデルの数値実験(シミュレーション)を行う計算物理学的な手法が有効です。そこで、数値実験のための計算手法の開発、数値実験結果の可視化方法の研究なども行っています。具体的な研究テーマには、ブラックホールや恒星のまわりにできる回転ガス円盤(降着円盤)と宇宙ジェット、太陽活動、星間現象、高エネルギー粒子加速、超新星爆発、星形成、宇宙構造形成、並列計算手法の開発、3次元可視化等があります。

宇宙観測実験

宇宙の真の姿とは、どのようなものでしょう。人類は星空を見上げて宇宙をみつめてきました。しかし、宇宙では人間の目には映らない多くの放射現象が起きており、可視光での観測だけでは宇宙の一面しか見ていないということがわかってきました。ニュートリノは遠方の宇宙からよりダイレクトに目に映らない高エネルギー宇宙についての情報を伝えてくれる貴重なメッセージです。私たちの研究室ではニュートリノで高エネルギー天文現象を探るニュートリノ天文学を推進しています。また、光での宇宙観測から得られる情報も駆使し、宇宙をさらに多角的に観測することを目指しています。ニュートリノ天文学研究室ではIceCube国際共同実験に参加しています。IceCube望遠鏡は南極氷河に光検出器を埋設し、深宇宙から飛来するニュートリノを観測するプロジェクトです。現在、稼働中の検出器を大きく拡張させるIceCube−Gen2計画も進行中です。

素粒子実験

この宇宙の仕組みを探り、宇宙の謎に挑みます。そのためには粒子をほぼ高速まで加速する「加速器」を用いた実験が有効な手立てとなります。素粒子実験研究室ではスイスにあるCERN(欧州原子核研究機構;セルン)の加速器を用いて、未解明である高エネルギーでのニュートリノの振る舞いやフレーバー物理の研究、さらに未知粒子の探索を行っています。具体的には、
(1)NA65/DsTau実験:SPS加速器を用いたタウニュートリノ生成の研究。
(2)FASERnu実験:世界で初めてのコライダーを用いたニュートリノ実験。
LHCを用いた3世代高エネルギーニュートリノの研究。
(3)FASER実験:LHCを用いた未発見の粒子(暗黒フォトン・疑似アクシオン粒子)の探索。
を実施しています。どの実験も国際共同研究であり、学生は学部4年次から海外の研究者との共同研究を進め、国際舞台で活躍しています。

固体物性理論

本研究室では、スピントロニクス、光物性科学、非平衡物理学、量子磁性、トポロジカル量子系、場の理論などに関連する幅広い分野の物性理論・統計物理学の研究を行っています。特に、物性物理学の2つ以上の分野のアイディアや方法を結び付けたり、複数分野に関連する新しい研究分野を開拓するような学際領域の研究に取り組むことが多いです。このようなことは、理論研究だからこそできることと言えます。また、基本的に、理論家が興味を持つ机上の量や概念よりも、実験を強く意識した研究を心掛けています。すなわち「観測可能かどうか」「その物性を検出するには何を測定すべきか」を考えながら、研究テーマを構築しています。一方で、物理現象の理解を深化させる、または、観測量の計算を容易にさせる新しい解析方法や概念を構築することにも関心があります。
最近の研究成果として、(1)様々な磁性体のスピン液体的相におけるスピンゼーベック効果(磁石の熱電効果)の研究、(2)テラヘルツ波駆動スピン流整流(スピン流版の太陽電池)の理論、(3)周期駆動散逸量子系で生じる非平衡定常状態の一般論の構築、(4)キタエフ・スピン液体における非線形光学応答の解析、(5)強電場印加による磁気秩序・トポロジカル磁気構造の制御法の提案、などが挙げられます。それぞれ、(1)スピントロニクス、非平衡物理学、量子磁性の融合領域、(2)スピントロニクス、光物性科学、非平衡物理学の融合領域、(3)光物性科学と非平衡物理学の融合領域、(4)量子磁性、トポロジカル量子系、光物性科学の融合領域、(5)量子磁性、トポロジカル量子系、場の理論の融合領域の研究成果と言えます。本研究室の研究に興味が湧いた方は、物性理論研究に挑戦してみませんか?

非線形・ソフトマター物理学

我々が日常的に目にする現象は科学の長い歴史の中で、そのほとんどが理解されてきたように思われるかもしれません。しかし、生命現象を含む多くの動的な現象は、そのメカニズムがまだ明らかとなっていません。その難しさは、系の非線形性(全体が個々の要素の和で表せない性質)や非平衡性(物質やエネルギーが流入・流出する性質)にあります。
非線形性・非平衡性が支配する現象は、ソフトマター系、流体系、化学反応系、生物系などに多く見られ、当研究室ではそれらの現象のダイナミックな秩序構造を理解すべく研究を進めています。現在の主な研究テーマは、非線形振動子の分岐現象、アクティブマターの対称性と運動性、パターン形成、界面ダイナミクス・ゆらぎ等です。μm〜mmの長さスケールで行う実験をベースに理論的解析や数値計算を組み合わせ、個々の系の秩序形成メカニズムの解明を進める中で、非線形・非平衡物理学の普遍的な知見を得ることを目指します。

電子物性物理学

物質が示すさまざまな性質(たとえば、電気を流すかどうか、あるいは磁石につくかどうか)は、多くがその物質を構成する電子の状態で決まります。このような性質を理解することは、物理学の主要課題の一つとなっています。私たちの教育研究分野では、主として磁気共鳴(EPR、NMR等)と呼ばれる手段を用い、広範囲の温度領域で、圧力や磁場を加えて上記の問題に取り組んでいます。
具体的には次のようなことを研究しています。
1)希土類元素化合物に見られる特異な超伝導
2)電気伝導性をもつ酸化物に見られる金属絶縁体転移
3)層状あるいは鎖状構造を持つ物質に見られる量子磁性

光物性・量子伝導物理学

半導体をナノスケールの構造に微細加工して、電子や光を小さな空間に閉じ込めると、その光に対する応答や電気伝導には新しい性質が現れます。本研究室では「閉じ込められた電子系」に特有の現象を種々の波長のレーザー光や1兆分の1秒程度の超短パルスレーザーに対する光学応答の測定、極低温・強磁場での電気伝導の測定などを駆使して研究しています。
また、新しい太陽電池材料として世界中で注目されているハロゲン化金属ペロブスカイトの研究を進めています。精密レーザー分光と伝導測定を高度に融合させた測定手法によって従来の半導体にはないそのユニークな物性の起源を明らかにしていきます。

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多様な化学物質、分子の世界へようこそ!

物質の性質、構造、反応などの基本原理を追及するのが化学科です。当化学科では高校の理論化学をさらに発展させた物理化学分野、高校でなじみ深いがさらに奥を究めた有機、無機、分析化学分野、それと生物と化学の境界領域である生物化学の分野の研究が行なわれています。
このような研究を日々行なっている教官から現代化学全般の体系的教育を受けた卒業生は、大学院に進んだり、社会に進出したりして幅広い分野で活躍しています。

Curriculum

カリキュラムについて

化学科のカリキュラムの特徴は、数多く実際の物質に触れることを目指し、1年次から4年次まで絶え間なく実験や演習を組み入れることにより、化学的なセンスの養成に力を注いでいることです。1年次から専門的な化学の授業があり、2、3年次では応用分野に関連する授業や多くの実験・演習がカリキュラムに組みこまれています。1年次では個別指導・教育研究領域の紹介等を行う化学基礎セミナーを開講しています。最終年次では、先端的研究に触れることにより学生個々の能力をさらに伸ばすため、各研究室に所属し卒業研究を行います。さらに、コンピュータ・シミュレーションを利用し、直感的理解の難しい化学原理の視覚的な理解をうながす教育プログラムを取り入れています。

化学科カリキュラムツリー

各教育研究領域の紹介

基盤物質化学

量子化学

物質に光(主にX線)、電子を照射すると内殻から電子がたたき出されます。放出された電子は周囲を運動しますが、電子の波動性によってX線の吸収強度、光電子の散乱強度等に振動が現れます。この振動構造を解析することによって内殻励起がおこった原子の周囲の幾何、電子構造についての情報が得られます。この方法は、従来では得られなかった非晶質(アモルファス物質)、希薄溶液中の生体物質、固体表面の局所構造についての貴重な情報を与えてくれます。このようなX線、電子と物質との相互作用、及び放出された電子の運動を理解するためには、散乱の量子力学を用いた理論計算が必要になります。その理論の精密化、実際に測定されたスペクトルの解析とともに、これらの実験が放射光施設で、あるいは実験室規模でも行われています。特に、スペクトルの解析には大規模な計算が必要となり、高速コンピュータを利用します。

分子化学

本研究室では、固体の電子・原子的構造の特長を生かし、固体にある分子オーダーのナノスペース中の分子あるいはイオン集団の構造と電子特性などを研究しています。ナノスペース中では分子自身と分子集団の構造と性質が特異性を持っていること、及び特別な反応性が見出されています。地球環境保全とエネルギー問題への基礎化学の立場からの寄与を考えて、海外の大学と共同して水素、二酸化炭素、メタン、酸素、窒素、水等の分子を研究しています。

分子ナノ物性化学

我々のグループは物理化学分野に属しており、研究ターゲットとしてナノレベル≒分子レベルの化学現象の解明に取り組んでいます。ナノレベルの空間は分子にとっては異常な空間となり、通常では考えられない挙動(反応や合成も含む。)がみられ、このナノの世界をターゲットとして研究活動を展開しています。大変小さなものを扱っていますが、その内容はかなり広大で、有機・無機物を駆使して様々な物質群を操り研究しています。また、実験的手法だけでなく、理論的手法も用いています。特に物理化学、化学の分野にこだわらず、科学の発展のため、理学らしい基盤研究の展開を考えています。

構造化学

本研究室のテーマを一言で表すと「乱れた系の静的・動的構造化学」となります。試料としては、超臨界流体、液体・溶液、イオン液体、ナノ粒子などです。研究手法はX線散乱実験、種々のエネルギー領域の光をプローブとした分光実験、および精密物性測定です。散乱実験からは原子の配置やゆらぎの情報が得られます。分光学からは時間の情報を得ることができます。すなわち、静的構造に時間軸を入れたダイナミックスを加え、対象をより多角的に理解することを目指しています。「乱れた系」の取り扱いは、まだ方法論が確立していないと言ってよく、装置作りから始まり、方法論の模索、そしてその測定方法の開発と試行錯誤の繰り返しです。その中で超臨界流体を紹介しましょう。超臨界流体は、気体とも液体ともつかない第4番目の状態として注目され、反応場や抽出溶媒としての実用化は大いに進んでおります。我々の研究室では、超臨界流体の特異な性質を構造の面から明らかにしていくことを目指しています。超臨界状態は、分子の分布において非常に不均一な状態と言えます。不均一度を定量的に表現する物理量として「密度ゆらぎ」に注目し、小角X線散乱実験よりこの値を求めています。系統的に調べていくと、不均一度が超臨界流体の性質を決める最も基本的物理量であり、物質に依存しない普遍的な性質であることが分かってきました。

分子分光学

分子分光学は、光(電磁波)を使って分子や分子集団の構造や運動(ダイナミクス)を詳らかにする学問です。本研究室では、フェムト(10-15)秒パルスレーザーを光源とした世界最高峰の性能を有する時間分解分光装置を作成し、その装置を使って様々な凝縮系(液体、溶液、固体)の超高速ダイナミクスを分子レベルの描像で解明しています。フェムト秒からピコ(10-12)秒の時間領域は、分子の核の運動において最も速い分子振動の時間領域になります。この速い分子ダイナミクスは、化学反応の素過程にも大きな影響を与えます。したがって、速い分子ダイナミクスを明らかにすることは、純粋に新しい科学的知識を得ることのみならず、化学反応の詳細な理解にも役立ちます。現在、私達は、複雑な相互作用をする物質群をターゲットにしています。例えば、イオンのみから構成されながら室温で液体である新しいタイプの液体「室温イオン液体」、固体と固体をある比で混合した時に液体となる「深共晶溶媒」、DNAのような協同的な水素結合を持つ「協同的水素結合分子系」、溶媒−溶媒、高分子−高分子、高分子−溶媒という相互作用を有する「高分子溶液」です。

表面化学

表面化学は物理化学の中でも固体表面等の界面を取り扱う点で、反応性に富み、未開拓の化学反応が数多く潜んでいる研究分野です。表面での触媒作用により、地球環境やエネルギー問題を解決することが期待されています。本研究室では高電圧型光触媒式太陽電池の研究、二酸化炭素の光燃料化および光資源化の研究、さらに窒素等不活性な分子を持続可能な手法で燃料化/資源化する触媒の開拓を行っています。表面化学はダイナミックで複雑な過程のため、新たな反応の理解には13CO2, D2O等同位体識別して反応を追跡し、さらに種々の分光法、とりわけ機能サイトをX線および赤外分光によりその場で選択観察しています。さらに、ダイナミックな情報を得る分光法へと研究を進める一方、密度汎関数理論計算で光触媒反応経路を追跡することで、実験では得られない反応中間体を調べてゆき、さらに持続可能な用途に適用可能な光触媒の開発にフィードバックして行っています。

分析化学

ある分子が他の分子やイオンをその大きさ・形・電子配置などによって識別し、選択的に反応する現象のことを「イオン・分子認識」といいます。イオン・分子認識は生体内反応において重要な役割を果たしていますが、人工的にも溶媒抽出、クロマトグラフィー、化学センサーなどの分離法・検出法の基本原理として利用されています。本研究室では、超分子錯体やイオン液体などの様々な機能性物質についてその溶液内反応(錯生成、イオン対生成、異種溶媒間移行など)における認識機能の特性と機構を明らかにするため、種々の測定技術を用いて反応を詳しく解析しています。また得られた知見に基づいて、新しい機能性物質の創製や金属イオン等の分離・分析への応用に関する研究も進めています。

環境分析化学

地球表層の環境や生物に含まれる物質は、溶存状態や固体状態など様々な存在状態を持ちながら混在しています。またそこに含まれる元素の化学状態や結晶構造は、それらが形成された環境によって大きく変化します。当研究室では、こういった多様な物質に含まれる元素の化学形をX線を用いた非破壊状態分析により読み取り、それらの形成環境や形成メカニズム、または特性の発生機構を解明することを試みています。地球表層物質や生物試料の採集を目的とした野外活動を行っています。また実験室系で化学的操作により試料合成も行います。これらを通じて、貝殻や歯、真珠など生物がつくる鉱物(生体鉱物)などの天然物質と、私たちが制御しながら合成した物質の、双方に対する理解を深めていきます。

機能物質化学

有機金属化学

本研究室では、比較的簡単な化合物から複雑な化合物まで幅広い有機化合物を研究対象として、有機金属化合物を鍵反応剤とする概念的に新しい有機反応の開発とともに、付加価値の高い化合物合成への応用研究を行っています。現在、下記の課題に取り組んでいます。
(1)有機金属反応剤を用いる高選択的反応の開発
アリル型金属反応剤の位置・立体化学の制御およびこれらの反応剤を用いた全く新しい高選択的アリル化反応の開発
(2)キラルルイス酸触媒を用いる新規不斉反応の開発
触媒的不斉アリル化反応、触媒的不斉アルドール反応、触媒的不斉マンニッヒ型反応、触媒的不斉ニトロソアルドール反応、エノラート類の不斉プロトン化反応の開発
(3)キラル金属アルコキシド触媒の開発と不斉反応への応用

遷移金属触媒有機化学

本研究室では、新たな遷移金属触媒の設計と創製を基に、意外性豊かな新反応および新変換法の開発を目指しています。合成化学分野において、新たな方法論を開発することは、有用な有機化合物の短行程合成を可能にするだけでなく、これまで合成が困難であった有機化合物の合成をも可能にします。我々は様々な遷移金属元素の多様な能力を引き出し、それを通じて新たな発見を行うことで、重要な社会貢献をしたいと考えています。具体的には、
(1)高機能キラルカルベン金属錯体触媒の開発
(2)閉環メタセシスを利用する置換芳香族化合物の選択的合成
(3)連続不斉反応による新触媒スクリーニングシステムの構築
に関する研究を進めています。

有機合成化学

21世紀の環境問題を解決し、高度な文明社会を維持・発展させるために、洗練された「ものをつくる」有機化学の熟成は不可欠であります。一方で、真に実用的な触媒や効率的な反応の開発など、有機化学には、まだまだ未解決な問題が山積しています。有機合成化学研究室では、これらの問題を解決する新規で力強い有機分子の骨格構築法の開発を目指し、研究を行っています。特に、コンビナトリアルケミストリーの手法を取り入れた不斉触媒をテーラーメードに開発しています。また、ヨウ素を生産する千葉県の特徴を生かし、ハロゲン結合を用いる触媒化学により、ヨウ素の高機能化研究を推進しています。これらの研究を通して合成した化合物を活用することで、細胞内の標的分子を可視化する蛍光化合物の開発や抗がん作用などを示す新規化合物の探索も進めています。

精密有機反応化学

有機合成化学は、医農薬品や機能性分子材料を創製するために必要不可欠な分野です。特に、環境調和型反応開発(グリーンケミストリー)は、重要な研究課題として注目されています。一方、生物が生存維持していくために、体内では酵素等を用いた精密な有機反応が起こっています。このような精密な有機反応を人工的に利用することにより、高難易度の分子変換や環境低負荷型反応が実現できることを期待しています。当研究室では、生体に深く関わりのある有機反応を基盤とした新規有機反応の開発として、(1)ハロゲンの酸化を利用した環境調和型分子変換。(2)複雑な反応場を構築する有機分子触媒の設計及び反応開発。(3)必須元素を巧みに利用した触媒的有機反応の開発。(4)新規窒素−ヨウ素結合型超原子価ヨウ素を用いた直截的アミノ化反応。を行なっています。この研究を通じて、環境保全や医薬研究に貢献できると考えています。

生体高分子化学

現代の生化学は、個々の生体物質の特性を調べることから、それらが集合し機能している細胞を対象とした研究へと漸次発展しつつあります。例えば、ガン細胞の他臓器への転移や、白血球の炎症部位への浸潤などにおける細胞間の認識の研究が盛んに行われています。本研究室でも、細胞が互いに相手を認識する機構の解明を主課題として取り上げ、いずれも哺乳類の細胞を対象に研究しています。具体的には、受精における卵子と精子間の動物種に特異的な結合はどのような機構によるのかを化学構造に基づいて明らかにしようとしています。この目標のためには、これらの細胞の表層に存在する糖質やタンパク質さらには種々のタンパク質からなる超分子複合体の構造や特性を詳細に調べることが必要で、遺伝子操作法や免疫化学的手法をも取り入れ研究を推進しています。

生体機能化学

生物の構成単位である細胞は生体膜(脂質二重膜)により外界と隔てられています。この生体膜は外部環境の変化から細胞内部を保護するだけでなく、微量な生理活性脂質を供給し細胞内刺激伝達系を制御しています。本研究室の研究テーマの中心は、生体膜中の生理活性脂質とそれを産生・除去する酵素によって制御される生体機能を明らかにし、更にはその制御機構を分子レベル・化学反応レベルで解明することです。例えば最近、生理活性脂質産生・除去酵素のあるものが糖代謝や細胞増殖、更には糖尿病やガンの発症・増悪化を決定的に制御する鍵酵素の一つであることも分かってきており、現在、その制御の分子メカニズムを生化学的手法を用いて明らかにしようとしています。また、他の生理活性脂質産生・除去酵素の新たな生理機能・病理現象への関与も探っています。そして、これらの研究の進展を通じて、生命が採用したストラテジー「生命が誕生した時点から存在する生体膜を、細胞内外を仕切る壁としてだけではなく、脂質の特徴を遺憾なく活用して細胞機能を調節する」の実像と詳細を生化学的に明らかにして生命の基本原理を解き明かすことを長期目標にしています。

生体構造化学

私たちの体の中には10万種類もの様々なタンパク質が存在しています。タンパク質はアミノ酸が鎖のようにつらなり、それが複雑に折りたたまれ、特定のカタチをつくり、生命の万能素材として私たちを支えています。本研究室では、生体の重要な機能を担っているタンパク質の立体構造を求め、どのような化学反応が起こっているかをカタチから理解しようとしています。特に病気に関係する膜タンパク質に焦点を絞って、そのカタチとはたらきを調べています(研究の流れ;遺伝子操作→タンパク質を大量発現→精製→結晶化→X線結晶構造解析→機能解析)。膜タンパク質が正常に機能しないと、ガン転移や骨粗鬆症などの重篤な病気を引き落とすことが知られています。特定のカタチを理解することでこれらの疾病を理解することや、コンピュータ上で結合しそうな化合物を探索して、ガンや骨粗鬆症などの治療薬になるような新しい阻害剤の創出を目指しています。

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ミクロからマクロまで、生命の不思議を多元的に探る

生命現象には生物種を越えて普遍的に見られるものと、ある生物種に特徴的な現象があります。これらを包括的に理解するには、ミクロな分子・細胞レベルからマクロな個体・集団レベルまで多様な視点を身につける必要があります。
生物学科では、多彩な内容の講義と実験を通して学生の生物学的視野を広げつつ、遺伝子の発現調節、細胞骨格タンパクの構造と機能、器官形成、系統進化、生態などの課題について深く掘り下げた高度な教育・研究を行なっています。

Curriculum

カリキュラムについて

1年次のカリキュラムは、しっかりした基礎を作ることに主眼を置いています。研究室紹介や数人ずつのゼミ活動が行われる生物学セミナーは、オリエンテーション的性格の授業です。生命科学1〜6では海外の大学で生物学の教科書として使われている Campbell Biology の原書を1年間かけて全冊読みます。基礎実験は2年次以降に受ける専門的な授業や実験の基礎として実験操作やフィールド活動やスケッチなどを学び、レポートの書き方や安全教育の指導も受けます。2年次から3年次にかけては各教員が担当する専門的な講義が行われます。平行して開講される実験では、DNA操作、タンパク質の分析、細胞培養、顕微鏡操作、画像解析、データベース解析、大学内外でのフィールド調査など高度な技術を身につけていきます。また、千葉大学の教員だけではカバーしきれない内容は、他の大学や研究所などの先生方による集中講義で補われます。4年次からは自分が興味を持つ研究分野の教員(海洋バイオセンターを含む)の研究室に所属し、個別指導のもとで1年間かけて卒業研究を行います。研究室のゼミでは卒業研究の進行状況を報告したり、英語で書かれた論文の紹介を行い、プレゼンテーション能力や論理的思考を養います。最後にその成果を披露する卒業研究発表会があります。また、自主ゼミとして様々な分野で活躍する卒業生との交流も行われています。

生物学科カリキュラムツリー

各教育研究領域の紹介

分子細胞生物学

ゲノム生物学

細胞のさまざまな反応や機能、そして動植物の組織や器官の機能、さらには個体の発生や形質は遺伝子によって規定されています。これはすなわち、遺伝子を構成するDNAの情報がRNAに転写され、さらにRNAからタンパク質に翻訳されて、つくられたタンパク質がこれらの機能や現象を制御することによるものです。本分野ではおもに、遺伝子の発現機構の制御および進化発生との関係について、次のような研究を行っています。
(1)ゲノムDNAは、核内でヒストンなどのタンパク質と結合して折り畳まれて染色体を形成します。このDNAとタンパク質の複合体がクロマチンです。DNA複製、修復や転写など様々なDNA代謝反応は、個体の発生・分化そして生存・維持の過程で精巧に調節されています。その仕組みを、クロマチンの構造変化に着目して研究しています。
(2)動物の形態形成および器官分化における遺伝子の発現動態とその進化的意義の研究を行っています。遺伝子発現動態に関する研究では、我々ヒトと同じ脊索動物のなかでもシンプルなゲノムをもつ原索動物(ナメクジウオ・ホヤ)に着目し、成体器官の形態と機能に関与する遺伝子群の発現を調べています。その上で、ヒトの形態や機能が進化の過程でどのようにしてもたらされたのかを分子的に理解するため、ゲノム・機能形態・進化発生をキーワードにした研究を行っています。

分子生理学

“日常ごく自然に”動植物の生体内で起こっている生理現象を、それを担うタンパク質の機能解析から解き明かすのが、本分野です。研究対象として高等真核生物の動物と植物の両方を扱っており、生化学、分子生物学、生物物理学、細胞生物学、遺伝学など幅広い手法を用いて分子機能の解明を目指しています。
(1)モータータンパク質であるミオシンは動物、植物含めすべての真核生物に存在している普遍的なタンパク質です。最近、植物のミオシンは植物の細胞、個体の大きさを制御する重要な因子ということが分かってきました。植物ミオシンについて機能、役割などの解明を目的とする基礎的研究および、植物の成長促進への応用を目的とする応用的研究の両方の面から研究を進めています。
(2)ヒトを含む多細胞生物では細胞同士の情報のやりとりが重要です。細胞間の情報を担う、細胞の外側で働くタンパク質の機能が調節される仕組みについて研究しています。

細胞生物学

全ての生物は「細胞」からできており、細胞の活動はすべての生命現象の基礎となるものです。細胞生物学は、生体を構成する物質とその代謝についての知識と、細胞の構造についての知識を総合して、細胞というレベルでさまざまな生命現象を研究する学問です。本分野では、酵母や培養細胞などを用いて研究が進められています。
(1)細胞のもつ遺伝情報は核のなかに格納されているDNAが担っています。DNAはタンパク質と作用しあってその構造を変化させます。細胞分裂に際して、遺伝情報を正確に子孫の細胞に伝えるための構造(染色体)を制御する仕組みについて研究しています。
(2)細胞内では数千種類におよぶタンパク質が絶えず合成されています。一方で、ゴミとなった不要タンパク質も細胞内で分解されます。タンパク質分解による細胞内恒常性を保つ仕組みについて研究を行っています。
(3)神経細胞がシナプスを形成する過程では、細胞の形態が大きく変化します。また、アストロサイトなどのグリア細胞も神経細胞を支えるために特殊な形態を持ちます。この形態を制御しているアクチン系細胞骨格を制御するタンパク質の機能について細胞生物学的・生化学的に解析するだけでなく、分子進化の過程も調べています。

発生生物学

生物はさまざまに整った「かたち」を持っており、それらの「かたち」は多くの場合、機能と密接に結び付いています。1個の受精卵からスタートするかたちづくりのドラマには沢山の仕掛けが潜んでいます。本分野では、動物のかたちづくりの仕組みを遺伝子、分子、細胞、組織のレベルで理解することを目指しています。現在、以下の研究が進められています。
(1)アフリカツメガエル胚では、胞胚期が終わるとダイナミックな細胞移動が起こり、原腸が形成されます。この時の細胞移動の原動力を発生しているタンパク質やその働きを調節しているタンパク質の役割について研究しています。
(2)骨格筋の発生過程では、未熟な筋細胞どうしの融合や、収縮運動を担うタンパク質の規則的な整列といった特徴的な現象が見られます。細胞融合の引き金はどこにあるのか?どのような仕組みでタンパク質がきれいに整列するのか?について研究をしています。
(3)さまざまな細胞現象や組織・器官の形づくりは、いくつものタンパク質による連鎖反応を通してもたらされます。特に細胞の分化や組織形成と再生の分子機構について、これらに働くタンパク質の遺伝子を明らかにして、遺伝子の発現を操作することにより、解明を行っています。またこのようにして発見したタンパク質の遺伝子によるがん抑制の機構についても、研究を行っています。
(4)カブトムシの硬いクチクラ、モルフォ蝶の鮮やかな青色のクチクラなど、昆虫は実に多彩な性質のクチクラをみずから作って身にまとっています。昆虫はどうやって多彩な性質のクチクラを作るのか?その解明に挑んでいます。

多様性生物学

生態学

生態学は野外の生物やその集団(個体群や群集)、そして、生態系を研究対象とし、複雑な自然の仕組みを明らかにする研究分野です。現代の生態学では、個体群や群集、生態系におけるマクロレベルの課題に対して、ミクロレベルのゲノム解析、その他の分子生物学的なアプローチも取り入れて総合的な理解を目指します。その研究成果は、深刻な社会問題となっている地球規模での環境悪化や生物多様性の減少などを解決するために、今後ますます重要になっていくと考えられます。本分野では、現在、以下の研究が進められています。
(1)生物群集には、しばしば特徴的な構造がみられます。様々な群集にこのような共通の構造がどのようにして生じ、さらに、それが群集の安定性や多様性などにどのように関わっているかについて研究を進めています。特に、植物とそれを利用する植食性昆虫の関係に注目しています。
(2)生物は、種内に遺伝的多型や個性と呼ばれる多様性をもっています。種内の多様性には、色や行動に関わるような変異から僅な多様性がどのように進化し、個体群や群集、生態系、大進化のパターンにどのような影響をもたらすかを調べています。

系統学

系統とは生物の進化の道筋です。類縁関係と言い換えてもよいでしょう。当分野では、進化の過程を探り、正しい類縁関係を見出し、これに基づいて分類体系を確立すること、及び進化における生物の多様化がどのような仕組みで起こるのかを明らかにすることを目指しています。解析対象は植物が主ですが、植物と共生等の関係を持つ動物・菌類・バクテリアも扱っています。現在、以下に示す3つの研究が進められています。
(1)陸上植物は良く研究されている分類群ですが、形態的には区別が困難ですが、生物学的に別種と認識される“隠蔽種”をいまだに含んでいます。これら生まれたての種を対象に、種分化機構の解明に取り組んでいます。また、交配様式や無性生殖(アポミクシス)の進化にも取り組んでいます。
(2)生物はどのように変化する環境に適応し、多様化を遂げてきたのでしょうか。環境に適応する仕組みの解明は、ダーウィン以来進化生物学の最重要課題です。私たちは、DNA配列に刻まれた過去の進化の歴史や自然選択の痕跡を探ることを通して、適応の仕組みの解明を目指しています。材料には主に、全ゲノム配列の解読されたシロイヌナズナなどのモデル植物を用いています。
(3)植物と動物は一定のかかわりを持って生きています。動植物のかかわりにより、形態の変化や種分化を引き起こした例として、花形態と送粉者の関係や食草の転換に伴う動物の分化について、野外観察や遺伝子の解析によって明らかにすることを試みています。また、植物化石を用いた過去の動植物の関わりの解析にも取り組んでいます。

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生命の源、地球と語り合おう、46億年の歴史と我々の未来を!

地球は46億年の歴史を持ちながら、今なお活発に活動し続けています。この地球の生い立ちから未来について、多様な観点と手法で研究しているのが地球科学科です。地形や自然災害、水の挙動、生物進化などの地球表層部での諸現象から地球内部での構造形成や物質移動などの運動像の解析まで、幅広い研究と教育を行なっていますが、天文と気象の分野は現在ありません。
地球についてもっと知りたい・自分の手で何か新しいことを明らかにしたい、という意欲に溢れ、野外調査や船上観測も厭わない活力ある人を歓迎します。

Curriculum

カリキュラムについて

1年次のカリキュラムは、地球科学科に早くなれてもらうことと、基礎学力をつけることに主眼を置いています。1〜2年次で受講する専門基礎科目や専門科目の必修科目は専門分野の基礎科目です。
2〜3年次にかけて、岩石鉱物学、地球物理学、地殻構造学、地史古生物学、地形学、地球化学、雪氷学、環境リモートセンシングの専門的な内容の講義および関連する実験が行われます。地球や地球を構成する物質を知るためには室内で行う実験のほか、野外で調査や観測を行うことが不可欠な場合もあります。野外では観測機器や目と手を使ってデータを集めます。また、千葉大学の教員による講義の他に、他大学や研究所などの諸先生による集中講義等も行われます。地球科学のさまざまな分野を広く学ぶとともに、各人の興味に合わせて学習し、専門性を高めていけるシステムとなっています。
3年次後期になると、自分が興味をもっている教育研究分野の研究室に所属し、1年半かけて1つの研究テーマについて卒業研究を行います。地球科学演習では、卒業研究の進行状況や英語で書かれたテキストを読んだり、研究論文の紹介等を行います。

地球科学科カリキュラムツリー

各教育研究領域の紹介

地球内部科学

岩石学・鉱物学

岩石や鉱物には、生成したときや、後に経てきた変化の情報が—実は生き生きと—保存されています。私たちの分野ではそれらのものを解読することによって、地球表層近くの物質の動きや変化を総合的に理解する努力を続けています。偏光顕微鏡や電子顕微鏡で(倍率や、精度をかえて)見る、分析装置で(大きさ、質量、化学組成を)測る、高温・高圧発生装置によって(地下深くの自然に近い条件を再現する)実験をするなど、さまざまな手法を用いて情報をとりだしていきます。その結果、マグマが生成してから固結するまでの過程、いったんできた岩石が地下深くの高い温度・圧力の条件で受ける変成作用の過程、岩石や鉱物といろいろな成分が溶け込んだ水との間でおこる反応過程を知ることができるのです。動かないものの代表とされる山々や岩石が、地殻のダイナミックな現象を経て、いま、そこに存在していることを理解するのです。
その基礎的な力を付けるために、学部の授業、実験では、岩石・鉱物の性質を理解するための学習、野外において地質調査の訓練、岩石・鉱物試料の観察、各種の機器による分析技術、実験技術の習得を目指しています。

地球物理学

地球物理学的手法を使い地球表面から地球深部までの構造とその活動を知ることが、地球物理学研究教育分野の大きな目的です。海域での観測が主ですが、陸域での観測にも重点を置いています。
海域では、海洋プレートの形成・成長過程に関する研究と地震発生過程に関する研究が中心的なテーマです。国内外の研究船の研究航海に参加し、地磁気・重力観測、海底地形測量、地殻構造調査、自然地震活動調査などを実施しています。
陸域では、地磁気観測や測地衛星を使った観測から地殻変動に関する研究を主に行っています。衛星画像データの解析も併せて行っています。地磁気観測からは地殻変動に伴う電磁気現象に関する研究を進めています。
また、以上の観測結果を基にして、地殻変動や地震発生過程をシミュレーションするモデルの開発も手がけています。

地殻構造学

大きさのスケールではミクロン(10-6m)程度の鉱物レベルから厚さ100km(105m)程度に達するリソスフェアレベルまで、時間のスケールでは周期10-2秒の地震動から優に数千万年(1015秒)に至る造山運動までの、広い時空範囲に及ぶ地殻〜上部マントルの変形構造を研究しています。そのため私達は地質学の一分野である構造地質学と地球物理学の一分野である地震学の双方を基礎に置いて研究教育を進めるというユニークな方法を採って来ました。マクロな地殻構造解析には、地表における地質調査とともに反射法・屈折法・レシーバ関数解析法といった地震探査技術を活用しています。一方、ミクロな鉱物レベルの微細構造解析には、偏光顕微鏡や電子顕微鏡を活用しています。また最近、南海トラフ地震発生帯掘削試料の力学的性質を実験的に調べる研究も行っています。

地球表層科学

層序学

層序学分野では、主に地史学、古生物学、生物学に相当する研究分野を取り扱い、古生物学的ならびに生物学的情報を解析することを通して生物と地球の変遷史を研究しています。現在進めている研究は、浮遊性海洋生物の検討に基づく進化学的研究、古生物学的情報と化石を含んでいた地層から読み取った地質学的・堆積学的・地球化学的情報を総合的に検討し、海洋ならびに陸域の古環境を復元する研究、海底に生息した過去の生物の生活様式や行動様式の復元と進化過程を解明する研究などです。これらの研究では、従来と異なる新しい視点や手法を用い、過去数億年間に起きた生物の変遷史を理解しようとしています。

地形学

固体地球の表面は、地形と呼ばれるインターフェイスです。水惑星であるがゆえに、また地殻活動が活発であるがゆえに“地形”は、岩石圏・気圏・水圏・生物圏の接点・接線・接面として絶えず作用を受け、刻々とその形を変えています。成立した地形は、人類のみならず地球生命体の活動の舞台となっています。自然と共存していくためにも、われわれは自然地形(時に人工地形)の成立過程について、正しく理解し、その将来変化を予測することはとても重要です。私たちは、地形をつくる力(地球内部からの作用・地球外部からの作用・人間による作用)を、空中写真・地形図・リモートセンシング・地理情報システム(GIS)などのツールと野外調査(地形測量・コア掘削・物理探査)を併用しながら、観察・記載・分析し主題図に表すことで理解を深めていきます。明らかにされた地形システムの諸過程は、今後の地形変化を予測し、自然環境の保全や自然災害に対する基礎的理解として役立っています。

生物地球化学

地球表層部には、地下水や海水、雪氷として大量の水が保持されています。水は人間を含む生物の生活・進化に欠かせないだけでなく、地球の気候や環境に大きな影響を与えてきました。海水に溶けている様々な成分は長い時間をかけて移動し、堆積物を構成する粒子や生物活動の影響を受けて変化し、特定の環境で濃集します。また、氷河・氷床には過去数万年にわたる地球環境の歴史が刻まれているだけでなく、寒冷環境に適応した特殊な生物群集が最近見つかっています。地球上で起きてきた、起きている環境の変化は、生物活動や様々な物質との化学反応の結果であり、その理解は将来の地球の姿を描くための鍵を握ります。本分野では、海洋(海底)ー陸上ー雪氷にわたる多様な場所を対象とし、野外調査・観測や試料採取から試料の観察・分析を行い、地球環境システムの変遷、および生物―物質間の相互作用の理解を目指して、世界でもユニークかつトップレベルの研究を行っています。

環境リモートセンシング

環境リモートセンシング

地球環境問題の重要性は今や学問の世界に留まらず広く世界で認識され、社会的・経済的にも大きな影響をもってきています。地球観測衛星による観測データは地球温暖化、雪氷域の変化、災害監視、砂漠化、植生量の評価、大気環境問題など、広域での環境診断を行う上で必要不可欠であり、地上観測や様々なデータと組み合わせることで多くの問題で直接・間接的に活用されるようになりました。環境リモートセンシング領域では、リモートセンシング技術を中心に理学的な視点で地球環境のより良い理解に資する研究を行っています。

大気・地球水循環

地球システムの中で、主に大気圏に関連する研究を行っています。地球温暖化、オゾン層破壊、大気汚染、森林火災、極端気象現象といったローカルだけでなくグローバルにも顕在化している重要な大気環境問題にリモートセンシングで迫ります。また、地球の水・熱循環および他圏との相互作用に関しても興味を持っています。こういった研究の基盤となる国際観測網を構築するとともに、雲・降水、他圏に関する衛星データ、他のデータとの複合的な解析にも取り組んでいます。

陸域環境

陸域環境を対象とした研究では、植生・湖沼を研究対象として衛星リモートセンシングによる様々な生物・物理パラメータを推定するアルゴリズムを開発しています。加えて、広域かつ長期的な衛星観測を用い、グローバルからローカルまで光合成をはじめ自然現象の発見・解釈・モデル化をする研究も行っています。一方、食料安全保障や気候変動適応策が全世界的に大きな関心を集めていることを受けて、環境保全の側面に配慮した食料生産システムの持続的な向上と発展を目指し、環境診断情報を扱った研究と実践、研究成果の社会への実装にも取り組んでいます。

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